So many tears アルバム「LOVE&WANDER」スペシャルロングインタビュー

①自由、だけど、責任の所在が明白な"ライフワーク"ができる場所

ーーSo many tears、2ndアルバム『LOVE & WANDER』完成、そして発表、おめでとうございます。それではまず、2011年9月に1stアルバム『So many tears』を発表した後、このアルバム制作の発端、ビッグバンの部分までグッと遡っていただきましょう。そこから1つ1つの経験が2ndアルバムにいかに注がれているかを、茂木さんとともに見ていきたいと思います。まずは1stアルバムの手応えって、どうでしたか?

KIN. まず僕としては、早く出したかったって気持ちがすごく大きかったんですよ。新しいことを始めるにあたって、自分達のカードが8枚集まったってことが、あの時、すごく嬉しくて、自分達がただただやりたいこと……誰に言われたでもなく、誰に指示されたわけでもない音楽を、本当にピュアなまま封じ込めるっていう、そういう作業をする場所が欲しかったから。もちろんスカパラでもやってるんだけど、それを少人数で、責任の在り処がすごくハッキリしている場所でね。歌詞を書くこともそうだけど、「ここから先はちょっと難しいかな?」なんて思ってるようなことも、全部自分たちで背負うと、曖昧なことがなくなるからね。誰のせいにもできないというか……音楽に対してすごく明白で、真摯であるというか、そういう責任の所在をハッキリさせておくことができる"ライフワーク"を行なえる場所を作りたかったんだよね。それまではフィッシュマンズのことをずっと考えてて、「スカパラがお休みになった時に取り組もう」って感じだったんだけど、実際に近年のフィッシュマンズは、すごくたくさんの人の協力があったからこそやってこれたことで、その活動によって、僕の想いとしては、佐藤君の曲がより多くの人にとって大切なものになったんじゃないかなって、思ったんですよ。で、もちろんこれからもフィッシュマンズの曲は演奏していくんだけど、自分が"いち音楽人"として生きていく中で、より自由な場所をちゃんと作って表現をしておかないと、自分が最後「人生ここまでです」って言われた時に、後悔すると思ったの。それで、フィッシュマンズ以外にも夢中になれる場所っていうのを準備しておきたいなとは、ずっと思ってたんだ。最大限に息の合いそうな2人と。

ーー1stアルバムは、そのための通行手形だったわけですね。

KIN. そう、通行手形であり、名刺だよね。「僕達はこういう者です!」っていうふうに渡せるものを、形で残せるようにしたかったし、それさえあれば、これからどこまででも行けるんじゃないか、っていうもの=それが1stアルバムだね。これまでも、たくさんいろんな感想を、手紙やいろんな媒体を通じていただいたけど、「すごく純度が高くて音楽愛みたいなものを感じた」って言ってくれた人が多くて、そういう人達の心に少しは入り込めていけたのかな、とは思ってる。僕らとしては、もっともっと入り込んでいきたいって気持ちがあるから、いただいた感想はすごく励みになりましたよ。だからこそ、もっともっと、みんなの反響を知りたいけどね(笑)。世の中に提示する限り、サイコー!!って思ってもらいたいって気持ちがあるしさ。

ーー音楽の"純度"が高いだけに、なおさらですよね。

KIN. 純度は高いと思うんだよ。自分の拙さも含め、ハハハハハ!すごく真っ直ぐな音楽を作ってるなとは思うけど(笑)、今までのキャリアに寄りかかるようなこととは全然違うからね。もちろん"片手間"じゃないし、バカ正直なくらい「めちゃめちゃ夢中じゃん!」っていう部分がたくさんの人に届いたのが一番嬉しかったよね。そんなふうに、1stを発表できたことによって「よし、ここからもさらに突き詰めていくぞ!」っていう、迷いのない部分はもちろん、でも一方で、次は1枚目を超えていかなきゃね、っていう部分と、両方あったっていうかね。

ーーこちらからすると、次はどんなことになっていくんだろう?っていう期待感を持てる1stアルバムでしたね。メンバーのみなさんもそういう気持ちだったんじゃないですか?

KIN. そうだね、どうなるんだろう?ってことを楽しむっていうのは、このバンドの大きなテーマだなぁ。

ーーそれで、3人がアイディアを出し合いつつ「それ、イイね!」ってことになった時の"無邪気さ"というか、そこからアイディアが形になるまでのエネルギーの質・量の高さが、So many tearsはすごいんですよね。

KIN. このバンドにおいて"無邪気さ"は大切にしていきたいなと思ってる。何回も大好きなレコードを聴いてるような、あの感覚のまま、自分達で何度でも聴けるようなものを作ろう!って、それだけを考えているみたいな(笑)。この間も、WOWOWでスパカラのドキュメンタリー番組を観たんだけど、あらためてスカパラの新曲「Diamond In Your Heart」の"夢を諦めるな"っていう詞を客観的に見たときに、自分の想像以上に響いちゃって……。海外でライヴをやったりすると、「俺達、本当にイケんのかな?」とかって、すごく不安になることもあって、正直、瞬間的に投げやりな気分になりそうになることもあるのね。でも、その"夢を諦めるな"って言葉で、一瞬で我に返るんだよ。僕にとって夢が叶うって……規模の大小いろんなライヴがあるけど、例えばスカパラで言えば、ヨーロッパ・ツアーとかで、最初5人くらいしか観客がいなかったのが、最終的に2万人くらいに膨れ上がってて、みんなが、自分達が発明したグルーヴで盛り上がってた……これは"夢が叶ってる"瞬間だと思う。それはSo many tearsもフィッシュマンズも、同じところに"夢"があるよね。So many tearsのCDを聴いてる時でもいいし、ライヴの時でもいいんだけど、ものすごく好きで毎日でもメロディ・ラインを口ずさんでくれたりするのは、僕の夢が叶ってるんだよね。多分、誰かの心に突き刺さってるってことだから。僕の心に突き刺さってきたいろんな音楽は、僕の生き方に素敵な影響を与えてくれてるし、それこそ歩き方すら変えてくれるっていうか、前向いて歩いてないと素敵な景色が逃げてっちゃう、っていう気持ちにさせてくれる。だから、僕らの創った音楽で「生きてるとこんな素敵なことがあるんだ!」ってことになっていてほしいんだよね。

②2ndアルバムへの胎動と最後の切り札=「TIME」

ーーそして、2012年4月にマキシ・シングル「AMAZING MELODIES」が発表になりました。これは4曲入りで、今回『LOVE & WANDER』にも収録されたタイトル曲は、すでに1stのリリース・ライヴでも演奏されていましたよね。

KIN. そうだね。「AMAZING MELODIES」は早く出したかったんだ。この曲は、HPのコラムでも書いた通り、2011年の4月に、メキシコであのメロディが僕の枕元に降りてきたんだんだけど、当時、まだデビュー盤のレコーディングが終わっていなくて、その最終日、全部をやり終えた後に加藤君と「新しい一歩をなんか残しておきたよね」なんて言ってたのね。で、スタジオから帰る前に、僕が「こんなメロディが降りてきたんだけど」って鼻歌で(歌い出しの部分を)歌ったら、その場で加藤君がギターでコードを考え出してくれて。1つ何かの作業をやりきった時に、新しい一歩の欠片(かけら)を提示できてるといいよね、っていうのは、So many tearsのモットーなんだけど、その時にたまたまこの曲のメロディがあったんだよね。

ーーこの曲がまさしく"新たなる一歩"になるわけですけど、この4曲入りのマキシ・シングル自体が、So many tearsとして新たなる一歩を踏み出してますよね? すでにデビュー盤とは違う輝きを持っている作品になっているというか……。

KIN. そうだよね。So many tearsなりの"ポップさ"というかね。まずSo many tearsを知ってもらう"名刺"を作ったんだけど、"鼻歌"みたいに歌ってもらいたいっていう、そんな曲がもっとあってもいいんじゃないかっていう気持ちもあったし、もっと"サウンドの特徴"を出せるなっていう意味では「AMAZING MELODIES」はうってつけのタイミングでできた楽曲のような気がする。自分達のルーツ的なもの……ロック的な要素もあったり、80's的なセンスが混ざっていたり、もちろんフィッシュマンズ的なエッセンスが混ざっていたり……僕らがすごく好きなものはたくさんあるんだけど、「これはSo many tearsでしか鳴らせないよね」っていうものを、できるだけコンパクトに収めたいっていう気持ちだったんだよね。

ーーそれは「BRAND NEW DAY」にも大いに言えることですよね。

KIN. なるほどね。デビュー盤っていうのが、3人がセッションして気持ち良いっていうところを、けっこう長めにスタジオ収録したものだとしたら、「AMAZING~」や「BRAND NEW DAY」は、焦点をけっこうメロディにシフトしてる感じだよね。でも、3人の出すリズムだとか、そういう気持ち良さはキープするっていう。……そうだね、そこが2ndアルバムに向けてシフト・チェンジするきっかけかもしれない。で、それより前、すでにデビュー盤が完成した頃に、加藤君が、後に「THE TIDE GETS HIGH」になる曲の原型を持ってきてくれていて、僕の中では前作の最後の曲「I'M INTO THE SUN」の次のお話にしたいなとは思っていたんだよね。

ーーオッ!! 嘘でも何でもなく「THE TIDE GETS HIGH」は、「I'M INTO THE SUN」の続きだと思ったんですよ! 直感的に。

KIN. おッ!! それはすごいなぁ! だからその頃(2011年9月)には「AMAZING~」と「THE TIDE GETS HIGH」の原型は、すでにあったんだよね。で、去年の夏、スカパラのWalkin'ツアーの最中に、僕が「SUNSET」って曲を作ったの。でね、加藤君と「この3人ならではの、スローでレゲェ調で、ライヴでやるとカッコいい曲が欲しいよね」ってことになって、その流れで「Where Is Your Gun?」のメロディを考え出して……僕の中では、その2曲が大きなきっかけかな。デビュー盤を出した後も、スタジオに入るたびに、加藤君がメロディの断片をいろいろ出してくれていて、普段からそのアーカイヴをいろいろチェックしてるんだけど、その中にすごくいいメロディを見つけて、あらためて加藤君に「これ、イイよね!」って持っていたのが「MY DESTINATION」になったり、「happy birthday」も、僕が「SUNSET」を作ったのと同時に、スカパラのツアー中にホテルの部屋で、加藤君とプリプロしたりメロディを考えたりしたものだね。

ーーでは、「THE TIDE~」と「MY DESTINATION」と「happy birthday」の3曲については、加藤さんがずいぶん序盤に、デッサン的なメロディを持ってきて、みなさんでちょこちょことアレンジを施していたということですね。

KIN. それが2011年だね。デビュー盤が完成した後のリハーサルで、まだ完成図は見えてないんだけど、もうみんなで触ってましたね。

ーーまだ原石の状態ですね。

KIN. 原石! それ良いね!

 

ーーそこからみんなで磨いていくわけですね。

KIN. その通りです! で、その後、2012年に入ってからは、最初にまず「BabyDRIVER」の出だしがあったんだ。最初にセッションした時のテープが残ってるんだけど、加藤君があのリフを弾きながら「野音をイメージして! 野音!」って言ってて(笑)、このリフは盛り上がるなぁと思って、絶対に形にしようと。で、「SUN SET」と「Where Is Your Gun?」を夏に作って、「TIME」は一番最後だね。

ーーあ、そうなんですね。茂木さんからいただいた資料で、「TIME」は「今回のアルバムの製作開始を決定づけた大切なナンバー」という表現があったので、このアルバムは、ある意味「TIME」から始まったのかな?と思っていたのですが、曲はたくさんありつつ、アルバムという形にするための、最後の切り札が「TIME」だったということですね。

KIN. そうだね。2枚目のアルバムを作るのに、良いキャラクターが揃ってきたなとは思っていたんだけど、でももう1曲、アルバムの核になる曲が必要だなと思ってたのね。そこで加藤君が「TIME」のメロディを持ってきた時に、「これはいい曲だなぁ~!」と思ったの。デモは加藤君がアコギを弾きながら1人で歌ってたんだけど、この曲と、それまでにできてた曲のメロディを思い浮かべてるうちに、「これぞSo many tearsっぽい!」と思ったんだよね。で、これは2ndアルバムにGOできるんじゃないかって。さっき「AMAZING~」とか「BRAND NEW DAY」で言った、So many tearsならではのポップ性みたいなものとか、メロウで力強いものを、アルバムとしてうまく表現できるんじゃないかな、って気がしたのね。3人での独自のグルーヴがあって、その上で鼻歌で歌いたくなっちゃうような感じっていうかね。バンドってさ、みんなで熱く語ったりする中で"モットー"みたいなものを掲げたりするけど、やっぱりそれ以前に"曲ありき"なわけで、「熱意はOK! で、それに見合う曲は何だっけ?」みたいなことを、みんな探すと思うんだけど、今回は「TIME」ができた時に、これでその辺の説明はつくな、と思ったんだ。

ーー具体的に、2ndアルバムはこういうものになったらいいなというイメージはありましたか?

KIN. いや~もう漠然としたままだよね。ただ、デビュー盤よりも1曲1曲をもっとコンパクトにして伝える方法はありそうだな、ってことは、みんなで話してた。だから、「AMAZING~」を作った時にも、自分たちの中ではポップな曲の長さというか……十分長いけどね(笑)。ただ、「SUNSET」とか「TIME」に取り組んでいる時は、新しい一手になってる!っていう手応えはすごくあった。で、例によって、僕が曲順を考えた上で、「こういう感じでアルバムができる予感がする」って話をみんなにして。だから、予定の曲順は、レコーディングする前と後で変わってないんだよね。

③2人の"4人目"のメンバー沖祐市、渡辺省二郎

ーーそして今回は、沖さんが多くの楽曲に参加されていますね。

KIN. うん。10曲中6曲だね。

ーー今回、沖さんが多くの曲に参加することになった経緯を教えてください。

KIN. 僕ら3人でアレンジのアイディアを練っている時に、自然とオルガンの音だとか、鍵盤の音が鳴ってる場面が多くあって、3人の頭の中で鳴ってる音を具現化してもらうために、これはもう気心の知れた沖さんにお願いするしかないなと、そういうことですね。沖さんは、僕らがすごく漠然としたことを言っただけでも、想像以上の応えをメロディラインで返してくれるんだよね。デビュー盤でも、「He's Got Soul」は、僕が「これ、沖さんのピアノがあったらいいな」と思っただけで頼んで(笑)、スタジオでポンと弾いてもらった瞬間に、もう号泣してしまった……そういう最高の瞬間もあったりしたしね。沖さんと出逢ったことは、僕の人生にとって本当にデカいからね。やっぱり沖さんに何か弾いてもらうたびに、僕の心は揺さぶられるよ。ホントにすごくフィットするからさ。それは長い付き合いっていう部分もあるだろうし、So many tearsのサウンドを沖さんがホントに分かってくれてるっていうこともあるよね。今回も、事前にいろいろ準備してくれてて、漠然としたリクエストに対しても、1つ1つ細かく譜面に書き起こしてくれたり、音色の種類をいろいろ準備してくれたりね。

ーーそれは、3人がこれまで好きで聴いてきた音楽をも、沖さんが共有して、理解して、形にしてくれているということですよね。

KIN. キた!! 良いこと言ってくれた~! そう、共通言語なんだよね。チープ・トリック!とか、ドアーズ!とか、ちょっとしたキーワードを言えば、もう「オーライ!!」みたいな感じ。それもありつつ、僕は、そのキーワードを、ぞれぞれがそれぞれに解釈するのも好きだけどね。

ーーリハーサルでは、みんなが同じ共通言語という基盤を持っていながら、それぞれの自由な発想、解釈を混ぜ合わせていくということですね。

KIN. 加藤君と僕の"ロック観"みたいなものがあって、そこはわりとカチッと、「ああいう感じね」「そういう気分、分かる分かる!」っていう部分があったりするんだけど、譲のフィルターが独特なので、そこが面白いんだなぁ。加藤君と僕で、けっこうカッチリしたデモテープの状態にするんだけど、それを譲が、良い意味で壊してくれるからね。そこは、このバンドのすごく大事なポイントで、例えば、冬の印象の曲で、けっこう襟を立てて歩いてるつもりだったのに、いつの間にか"紫外線が強くなってきた"みたいな、夏をイメージさせる瞬間があったり、ナイーヴだと思っていたものが、すごくファンキーになったりとか、楽曲の方向性すら変わっていく瞬間があって、本当に面白いですよ。リハーサルでそういうことがハマった時に思いっきり盛り上がったり、そういう時間が楽しいんだよね。

ーーそういう、作用のし合いが"バンド"だし、それがバンドを続けていく原動力にもなりますよね。

KIN. そういう気持ちをキープすることが、たくさんのリスナーを巻き込めるはずなんじゃないかって思ってるところはあるよね。

ーーもう1人、So many tearsには、影のメンバーとも言えるレコーディング・エンジニアの渡辺省二郎さんの存在が、今回も大きいと思えました。

KIN. 間違いないですね。省二郎さんは、僕らがちょっと迷うと「こうした方がいいんじゃないですか?」ってすぐに提案をしてくれたり、何となく頭の中で「こういう音が聴こえてるんだけど」っていうサウンドだとかエフェクトの感じを、具体的に、現実の音にしてくれるとかね……そういう、イメージを音にしてくれるという点での感謝はもちろん、今回はもっと大きなイニシアチヴも執ってくれましたね。歌のテイクの判断とか、ものすごく早いんですよ。すごく早いのにちょー的確で、「ホントにこの人はどういう耳をしてるんだろう?」って思うくらい(笑)。レコーディングでは、やっぱり省二郎さんがマイキングして、TD(トラック・ダウン)も全部省二郎さんでしょ。自分で立てたマイキングだから、完成形も一番最初に鳴ってるんですよ。だから例えば、僕らが加藤君の家でプリプロした音を聴いてもらいながら、「こういう感じなんですけど」って、よくダビングのアイディアを提示するんだけど、その取捨選択……「それはイイね」「その要素は全然なくて大丈夫です」って、判断がものすごく早い。それはTDの完成形が見えている上で、「その新しいアイディアはイケる」「今の録音状態だったら必要ない」ってことなんだよね。

ーーそれは1stアルバムのレコーディングの時も、実際に見ていて驚きました。

KIN. 本当に素晴らしかったです。だから今回、これはもう"共同プロデュース"だなと思って、僕らの方から「共同プロデュースの名前をもらえないかな」ってお願いしたの。

④10の歌詞=ストーリーに込めた"LOVE & WANDER"という世界観

ーーでは一転、作詞に関しては、どんなスケジュールで取り組んだんでしょうか?

KIN. 相変わらず時間がかかりますよ(笑)。でも、例えば「TIME」に関しては、サビの部分はすぐにできたり……メロディを聴いた時から言いたいことがハッキリしてたんだよね。僕達が20代だったとしたら、この3人が集まることが当たり前だと思ったり、喧嘩もしたりすると思うんだけど、この歳になると、「たまたま出逢えてることがものすごく重要なんだ」ってことがだんだん分かってくる。デビュー盤で言うと「(don't let go of your)PRECIOUS」もそうだけど、それは本当に"かけがえのないこと"で、だからこそ、かけがえのないことに寄りかかるんじゃなくて、かけがえのない仲間と"新しい一歩を踏み出そうよ"っていう。

ーーそういう茂木さんの世界観は、もちろん1stにも溢れ出ていましたが、2ndでは、1stで表現しようとしていたことが、まさに"LOVE"&"WANDER"という表現の元で、より明確になったんじゃないかなと思えたんです。個人的な妄想としては、ほとんどがLOVEなんですけど、少しのWANDERの部分を、So many tearsは常に模索しているというか、表裏一体として表現しようとしてるってことが、詞からも、サウンドからも、強く伝わってきたんです。

KIN. 良かった~"LOVE & WANDER"にしといて!(笑)。そう、LOVEなんだけど、LOVEだけに寄りかかりたくないんだよね。「3人が出逢えて良かった!」のはもちろんなんだけど、それだけじゃなくて、「じゃあ、この3人で切磋琢磨しようよ」ってこと。だって、何歳になったって切磋琢磨するでしょ、みたいな。よく加藤君と話すんだけど、新しい音楽を提示する時に、"しつこい"とか"ネバる"とかいうパッションを疎かにするとおもしろくないと思うんだよ。アーカイヴ的に音楽を振り返るだけなら、「久しぶりだね、じゃあ楽しくやろう」で全然OKだけど、でもSo many tearsって名乗って、大好きな仲間で新しい音楽を創ろうよっていうんなら、それは「緊張感ないとイヤなんですけど」って気持ちになるのは、僕にとっては当然なんだよね。で、それはもう自分のライフワーク。「楽しくやろう」なら20年後でもできるし、そういうことはその時まで取っておけばいいかなって気がするから。それまでは、新しい音楽を発見する旅をやり続けようよ!って思う。

ーー詞を読みながら曲を聴かせてもらいましたが、最後まで聴いて、「あ、これは"LOVE & WANDER"だな」って、本当に思いましたよ。

KIN. そう言ってもらうと救われますよ(笑)。自分の中では、もう一歩くらいうまく"WANDER"に踏み込めるような言葉を編み出せたら嬉しいなと思ってたんだけど、でもそれって、言葉だけで方を付けるんじゃなくて、やっぱりこの3人のサウンドありきだから上手くいくんだよな、っていうことで、今は正解だと思ってる。でも、自分の言葉を提示するってことについては、やっぱりもっとスキルを上げたいとは思ってるけど。

ーー今回「Where Is Your Gun?」で、共作詞に谷中さんがクレジットされていますが、これはどういう経緯で?

KIN. あの曲は、サビの部分は自分の中では完成してて、「批判を恐れて何も語らない」とか、恋愛でも「フラれるのが怖くて告白できない」、というよりも、例えばダメだったとしても、告白して「ゴメンナサイ」って言われる方が、自分としては素敵な人生だなと思うんだよね。よく言うじゃないですか、わかったフリして人生過ごしてても、最後、すごくもったいない気持ちになるだろうな、っていう。それだったら、分からないことは分からないって言って、もっと先に突き進む方が燃える(笑)。要は、自分の気持ちを解き放てばいいし、それが本当の"自分らしさ"なんじゃないか、って。そういうテーマは、「PRECIOUS」とか「SUNSET」とか「TIME」とか、「BRAND NEW DAY」もそうなんだけど、あの「Where Is Your Gun?」の緊張感のあるサウンドの中で、なんとか上手く表現できないかなと思ってた時に、谷中さんに言葉にしてもらったらどうなるだろう?っていう欲が、自分の中にフツフツと沸いてきて(笑)、共同作業してみたいなっていう気持ちになったんだよね。で、やっぱり谷中さんの歌詞を見た時に、「ああ、すごい歌詞だな」と思った。当時、谷中さんが『世界は言葉でできている』って番組に出ていたんだけど、あれはおもしろくて、例えば「アインシュタインがこう言いました」と、で、その全文は掲載されなくて、途中だけがブランクになってて、「あなただったらそのブランクにどんな言葉を入れますか?」ってお題に答えるという番組なんだけど、谷中さんが、毎週ものすごい答えをブチ込んでたの。「"I LOVE YOU"を訳してください」というお題の答えが「もうあとには戻れないな」とかさ(笑)、なんというか……もう無敵だなと思ったのね。この人は、言葉が尽きることがないんだなって。でも、そういう谷中さんでも、「言葉が出てこない!」って黙っちゃったりするようなことがあったら、そんな時、どんな想いに駆られるんだろう?ってことが知りたくなったのね(笑)。よく、世間が求めてる自分らしさに押し潰されるような時ってあるけど、この曲では「そんな時でも、アイツはいつでもやってくれる」みたいな話が作れたらいいなと思ってて、だったら本人に聞いてみようと思ったのが、歌詞を依頼したきっかけだよね。

ーーこの詞は物語的ですよね。本のページをめくっていく感覚があって、そういうところも、"GUN"という言葉自体も、相当新鮮でした。

KIN. 谷中さんにそういうきっかけをチラッと話したら、こういう言葉をくれたんだよね。で、谷中さんがこの歌詞でくれた答えっていうのは、結局は「常日頃から準備をすることで、それが得意なものになっていく」っていうことなんだなと思った。"GUN"っていうのは、自分の意志とか得意技みたいなものだと解釈してるんだけど、常日頃から銃口が錆びないように、みんな自分のことを磨くと。すべてはそこに鍵があるんだなぁと思うし、それによって行動力が生まれていくものなんだなと思いますね。

ーー詞をよく読むと、自分のことを言われてるような気持ちになります(笑)。茂木さんの詞もそうですが、誰にでも思い当たる節があるんじゃないかと思える内容になっていますよね。

KIN. 僕もこの詞をもらった時にもすごく刺激的だったし、自分が書いた詞だって、いつも自分に返ってきますよ。どの曲もそうだなぁ……「PRECIOUS」もそうだし。自分に問いかけてるってことか!っていうところにいつも行き着くもんね。「ところで"自分"はどうなの?」ってことばっかり(笑)。

ーー聴いた僕らも、自分のことのようにストーリーの中に入っていけるという、そういう意味での普遍性を、茂木さんの詞は持っていますよね。

KIN. もしそうなっていたら、それ以上嬉しいことはないですね。自分のことを考えると、自分の好きな曲の歌詞ってそんなものだったりするよね? 「うわぁ~それは俺のことだ!」みたいな(笑)。僕も村田さんもお互い大好きな佐野元春さんの詞だってそうじゃない? だから選ぶ言葉ってすごく大事で、やっぱりシンプルな単語の方が伝わるというか……佐野元春さんもジョン・レノンも、佐藤君も、みんなに共通しているのは、シンプルなほど"後を引く"っていうか、入り込んでくる。童謡もそうだけど、シンプルな言葉だからこそ、古くならないんだよね。で、僕にとっては、佐藤君とか谷中さんって、「身近にいる人がその2人かよ!」っていうくらいハードルが高いんで、(作詞の作業が)全然進まない(笑)。

ーーでも、それをすべて英語で表現している人は茂木さんだけですから。

KIN. あぁ~~なるほど……。昔からアルファベットが好きで、眺めてるだけで気持ち良いんだよね。小学生の頃とかも、クイーンとかチープ・トリックのLPを買って、英語の詞を見るのがすごく好きで。"gonna"が"going to"の略だって知ったのも小学校6年の時で、そういうスペルのおもしろさに興味があったのかもねぇ。

ーー小学校6年でソレは相当早いですね。

KIN. 単純に好きだったし、見てて気持ち良いんだよね。今、加藤君と僕が一緒に作業をして出てくるメロディっていうのは、2人の洋楽的なバックグラウンドからくるものがけっこうあって、やっぱり英語で歌う方がグルーヴ的には良いんじゃないかなと思ってるんだけど、日本語でもいつかは……完成させたいよなって、漠然と思ってはいるんだけどね。でも今はまだ分からない。今はこのメロディを英語で歌ってる方が自然だからね。2人には言われるけどね、「日本語詞、読みたい」って(笑)。2人とも対訳がすごく好きだって言ってくれるから。まぁでも、英語にしても日本語にしても、やっぱりシンプルな言葉がいいよね。ホントに時間はかかるんだけど……。例えば「TIME」とか、もともとベーシックが自分じゃないところから生まれたメロディに詞をつける方が、不思議と作業が早いみたい。逆に一番時間がかかったのは「SUNSET」かな。

ーー実は、"SUNSET"という言葉って、夕暮れとか黄昏(たそがれ)みたいな、どちらかというと"斜陽"な風景を思い浮かべてしまうんですが、この楽曲自体はアップテンポな2ビートのチアフルな希望に満ちた詞/曲だったので、どんなSUNSETだったんだろう?と思ったんです。

KIN. 僕がメロディ考えてる時に見たSUNSETって、もう"明日への希望"にしか見えなかった(笑)。美しすぎて、ちょっともう圧倒的だったんだよね。こんなものを見せてくれてありがとう!と思った。だから黄昏てる場合じゃなくて、「明日が悪いわけないじゃん!」「もっと、どんどん前に行こうよ!」って気持ちになった。自分としては「PRECIOUS」の続きみたいな感じかな。あの夕暮れ見たら、「明日に向かって、もう一歩踏み出してみようよ」って思うよ。

ーー「TIME」も「MY DESTINATION」もそうですけど、古今東西、このタイトルの曲はたくさんあると思いますけど、そういう一般的でシンプルな言葉の方が、想像が膨らみますよね。

KIN. そうなってるといいなぁ。「MY DESTINATION」は、アルバム中、一番"さすらい"っていうか"WANDER"だなと思ってる。この曲をレコーディングする時にみんなで話してたのは、『パリ、テキサス』の映画(1984年/wiki→「テキサスを一人放浪していた男の、妻子との再開と別れを描いたロード・ムービー」)のことで、ライ・クーダーがサントラをやってる、80年代の名作なんだけど、「あのオープニングの景色なんだよね」って。僕の中ではそのイメージで、詞の内容としては、やっぱり「この居場所で、そのままでいいのかな」「もっとSomethingがあるんだよ」っていう気持ちになる時間帯=年齢っていうかね。

⑤かけがえのない出逢いに安住はしないさらに鼓舞し続ける"So many tearsという旅"

ーー「TIME」も、"時間"という普遍的な言葉を、あえてタイトルに選んだわけですが、ここで茂木さんが思う"TIME"とは、どういうものなんでしょうか?

KIN. 音楽だったら、一緒に鳴らし始めるっていう喜びを覚えてから二十数年経って、愛する人だったら、その人と出逢って二十年くらい経ったな、っていう気分というか……それってやっぱり20代の時には言えないことで、今の自分の年齢になってみて、長い間一緒にいる仲間とか愛する人って、やっぱりホントに素敵だし、本当に"かけがえのない"ものなんだよね。20代の時って"たまたま集まった/出逢った"って思う人もいると思うけど、僕も実際、フィッシュマンズの時に、この出逢いは素晴らしいとは思っていたけど、やっぱり今になって「こんなに特別だったのか」って、つくづく思うんだよ。でもそれは20代の時には分からない。20年以上一緒にやってると、もう出逢えただけで相当ラッキーなんだなって思うし、それは愛している人との出逢いもそうだよね。「それだけ長い間一緒にいられる間柄って、なかなか大したモンじゃん!」っていう、そんな想いが根底にあって、そういう大好きな仲間や愛する人に、エールだったり、「俺達、もっと行けるよね」だったり、そういう言葉を送りたいっていう感じかな。それに、"Let me shake your soul forever"って書いたんだけど、誰かの心を揺さぶるのって、僕には音楽でしかできないんだけど、音楽だったらみんなの心をずっと揺さぶって興奮させる自信はある!っていう意気込みでもあるのね。"今までの時間"ってすごく大切な時間だったんだなってことを振り返ると共に、そこに安住するんじゃなくて、ここから先もみんなを揺さぶっていくよ、っていう、そういう未来志向の"TIME"でもあるし、その"TIME"は、もちろん順調なだけじゃないってことも、この年齢になってよく分かってる、っていうね。自分だけにアンラッキーなことがあった、ってことじゃなくて、20代から40代になって、20年以上の歳月が流れたら、誰だっていろんなことがあるでしょ、っていうことだよね。

ーーそこで流した涙をも踏まえて未来志向に替えるのがSo many tearsですよね。

KIN. だからSo many tearsってバンド名は、音楽生活20年、で、年齢もこれくらいになってくると、出逢いだけじゃなくて別れも体験するし、その別れの寂しい涙もあれば、嬉しくて流す涙も、感動の涙もある。生きてるといっぱい涙を流すんだけど、でも流した涙は絶対に無駄にならないし、むしろ、その先の自分の態度が問われてるってことだと思う。「じゃあ、自分はどうしていくか?」ってことだもんね。

ーーこの曲では、本当に譲さんのベースがカッコ良いですね。

KIN. 本当にカッコいいよね。僕なりにいろんなミュージシャンと25年くらい一緒に演奏してきてるけど、やっぱり譲くらい自由な発想でベースを弾いてる人はなかなかいないし、あそこまで独自なベーシストには逢ったことがないですね。すごく独自だと思うし、彼も独自なのを知ってて、それを貫くって決めてると思う。そんな彼のベースが、僕は死ぬほど好きだし、今だに「どうしてそんなことが思いつくの!?(嬉)」ってことばっかりだしね。

ーー譲さんのベースって、発想が自由なだけに、他の人の自由な発想の余地を提供するような印象があるんです。

KIN. 僕的には、譲と演ってるとすべてが正解に思えてくるんだよね。それこそ、フィッシュマンズでデビューした90年代、いや、その前の学生時代の80年代からずっと一緒にいて、一緒に演奏しなかった時期もあるけど、時が流れて、やっぱり一緒にポンと音出して、こんなに相性が良いことがあるんだなぁって思えるのは、ホントに素晴らしいことだと思う。

ーーそれは加藤さんにも言えることなんじゃないですか?

KIN. それはホントにそうで、まず加藤君と曲作りをするのは、夢のように楽しいんですよ。導いてくれるっていうか……加藤君はいつも励ましてくれるし、「すっごい良いメロディだよ!」って。で、「こんなコードどう?」「こんな感じかな?」ってどんどんトライしてくれるし、もう音楽シーンが加藤君みたいな人ばっかりだったら、全体がものすごく充実するのになぁと思う。あんなにネバリ強くて、あんなに愛があって、あんなに積極的な人はなかなかいないんじゃないかな。ホントに素晴らしいと思う。

ーー人の意見を捨てることは簡単ですけど、"拾う"っていうのはその人の"姿勢"の問題ですからね。

KIN. そうだよね。"拾う"っていうのはすごく大事だし、加藤君は"拾う"ってことをすごく大事にしている人だと思う。聞き流したりするのは簡単だからね。

ーーラストの「BRAND NEW DAY」に顕著ですが、あらためて今回の『LOVE & WANDER』には、そんな"対メンバー"への愛を含め、いろんな形の「愛」と、新たなる一歩=「旅」へと踏み出す勇気や意志が、いろんな表現されていると思いました。

KIN. それが伝わってたら嬉しいな~! このアルバム全体として、友達や仲間への、愛する人への、親から子供への、自分が好きでたまらないものへの……そういう、いろんなものへの「愛」があって、さらに「旅」というものへの不安と希望といった気持ち、そういうものを吹き込んだつもりで、"LOVE & WANDER"というタイトルにしたんだよね。音だけ聴いても「愛」と「旅」なんだって感じてもらうことができれば、「イケてるよ、So many tears!」と思うんだ。それは1つの理想だね。言葉を書いてる時に、「愛」なんだけど、漠然と背後にある「不安」みたいなものって、何かしらつきまとうよなって思ってたし、でも、それがあってこその「人生」なんだよなって思う。で、「So many tears」って単語が、ポジティヴに響くんだよねっていう結論に、みんながなってくれたいいなと思うし、それが僕らの目標でもあるしね。だからこそ、もっともっとこの音楽をたくさんの人に届けたいね。

ーーだからこそ、最後「BRAND NEW DAY」で締めるというのが、すごく良かったですね。

KIN. 「そういう、新しい日を作るのは自分だ」ってことだよね。もちろん、そういうことを考えていても、それを誰かに強制するものではまったくなくて、「イイよね!」って言ってもらえる音楽を創りたいだけなんだけど、1つ思っているのは、やっぱり誰かのせいにするのは簡単なので、それで終わらせちゃったら何も片づかないんだよな、ってことなんだよね。

ーー"自分から変えていくんだ"という強い気持ちとか意志ってものが、So many tearsを支える支柱であり、ひいては茂木さんの根底に流れる思想だと思えます。

KIN. そうですね。意志であり、志なんだなと思う。

ーーそれらを表現するものとして、「それを新しい日と呼ぼう」という歌詞は、素晴らしい一節だと思いました。

KIN. ありがとうございます。確かにこの歌詞は、今まで自分が書いた中で一番好きな歌詞かもしれない。自分らしいというかね。自分にしてはよく頑張ったなって思います。だから、そんなふうに「イイよね」って言ってもらえたら、本当にめちゃめちゃ嬉しい。でも、詞はいつもすごく時間がかかってるから(笑)、日々の積み重ねで、自分に問いかけつつ、もっと早く書けるようになるといいなと思いますね。それも1つの夢かな。それで、なおかつ、みんなにSo many tearsを聴いてもらって、少しでもワクワクしてもらえたらホントにサイコーですね。自分が10代の頃に洋楽とかに出逢って、ものすごく毎日にワクワクした時のあの気持ち、あのワクワク感って、自分にとっては何物にも代えがたかったから、今度は、自分たちが奏でる音楽で、誰かにそんな気持ちをもたらすことができたら、そんなに嬉しいことはないね。そして、その「旅」はまだまだ続くっていうことで!

(了)
■インタビュー&文:村田誠二(ドラム・インタビュアー)

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